
児童発達支援や放課後等デイサービスのケース会議は、子どもの情報を集めるだけの時間ではありません。本人や家族が大切にしていることを確認し、日々の観察と支援の記録を持ち寄り、次に試す具体的な行動をチームで決める時間です。
一方で、会議が「気になることの報告」で終わったり、経験の長い職員の見立てだけで進んだりすると、参加者ごとに次の行動が違ってしまいます。ここでは、30分程度の会議でも焦点をそろえやすい7項目を、共有する順番に整理します。
1.今日決めたいこと
会議の最初に、「情報共有」「支援方法の見直し」「関係機関との連携」「個別支援計画の確認」など、今回の目的を一文で示します。目的が複数ある場合も、終了時に何が決まっていればよいかを一つずつ言葉にします。
例:「切り替え時に本人が選べる方法を一つ決め、来週までに試す担当と記録方法をそろえる」
目的が曖昧なままでは、参加者が知っている情報を順番に話すだけになりやすくなります。緊急性の高い安全上の内容がある場合は、通常の議題と分けて責任者へ速やかに報告します。
2.本人・家族の希望と目標
最初に課題や困りごとを並べず、本人が選んでいること、やってみたいと伝えていること、家族が大切にしている生活や参加の希望を確認します。言葉で希望を表しにくい場合は、日々の選択、表情、近づく・離れる行動など、確認できた事実を手掛かりにします。
家族の要望と事業所の見立てが異なるときは、どちらかを正解にせず、共通して目指せる生活場面や、さらに確認が必要な情報を整理します。本人の意思を推測だけで決めないことが大切です。
3.場面ごとの観察事実
「落ち着かない」「集中できない」などの評価語だけでは、参加者が同じ場面を思い浮かべられません。いつ、どこで、誰と、何の前後に、どのような行動があり、どれくらい続いたかを分けて共有します。
- 活動の種類と時間帯
- 直前にあった出来事や環境の変化
- 本人の言葉、表情、動き、選択
- 周囲の人や物との関係
一度だけの出来事か、複数の場面で繰り返しているかも分けます。記録がない部分は、分かったことに混ぜず「未確認」とします。
4.試した支援とその反応
職員が何をしたかだけでなく、その前後で本人の反応がどう変わったかを共有します。同じ「声をかけた」でも、言葉の長さ、提示した物、待った時間、職員の位置で受け取り方は変わります。
- 支援前に見えていた本人の様子
- 職員が行った具体的な支援
- 直後と少し時間を置いた後の反応
うまくいかなかった支援も責任追及の材料にせず、「どの条件では合いにくかったか」を確かめる情報として扱います。
5.見立てと未確認の仮説
観察した事実と、「見通しが持てなかったのかもしれない」「音が負担だった可能性がある」といった見立てを分けます。複数の見立てがある場合は、無理に一つへ決めず、それぞれを確かめる方法を考えます。
経験のある職員の意見も、事実とは別の仮説として言葉にすると、新人職員も観察に参加しやすくなります。医療、発達、家庭事情など、事業所だけで判断できない内容は、必要な同意と手順を確認したうえで関係機関へ相談します。
6.次に優先する一つ
会議で出た課題をすべて同時に変えようとせず、本人の安全と権利、意思や安心、生活への影響、実行可能性の順に確認し、次回までに優先する一つを決めます。
目標は「落ち着いて参加する」のような抽象語ではなく、「活動前に二つの選択肢を示し、本人が選んだ方法で5分参加できたかを見る」のように、支援と確認する反応を具体的にします。
7.担当・期限・確認日
最後に、誰が、いつ、どの場面で、何を試し、どこへ記録するかを決めます。さらに、その記録をいつ、誰と確認するかまでそろえます。担当者を一人に集中させず、必要な準備や相談先も明確にします。
例:「月曜から金曜の始まりの会で担当職員が選択カードを提示し、選んだ方法と参加時間を記録する。翌週月曜に児発管と担当者で5分確認する」
決定事項は、会議に参加していない職員も同じ支援を行える言葉で残します。共有範囲は個人情報と職務上の必要性を踏まえ、事業所の規程に従います。
30分で進めるケース会議の型
- 3分:今日決めたいことを確認する
- 5分:本人・家族の希望と現在の目標をそろえる
- 8分:観察した事実と支援後の反応を共有する
- 6分:見立てと未確認事項を分ける
- 5分:次に試す一つの支援を決める
- 3分:担当、記録場所、確認日を読み合わせる
時間を短くするために、本人の基本情報を毎回最初から読み上げるのではなく、今回の目的に必要な変化と事実へ範囲を絞ります。
会議で扱いきれない内容を分ける
虐待や権利侵害の疑い、重大な安全上の懸念、事故、個人情報の漏えい、医療的な判断が必要な内容は、通常のケース会議だけで完結させません。事業所の緊急時・事故・虐待防止・個人情報保護の手順に沿い、責任者、自治体、関係機関、専門職へ必要な報告と相談を行います。
日々の記録から会議へつなげる
ケース会議の質は、会議中の発言量より、日々の観察と記録が具体的かどうかに左右されます。子どもを観察するときの6つの視点、申し送りで共有したい6項目、新人職員へフィードバックするときの6つの伝え方も、共通の言葉をそろえるときに役立ちます。
こども家庭庁の各種ガイドライン・手引き等では、児童発達支援・放課後等デイサービスのガイドラインが公開されています。支援計画、本人・家族・関係機関との連携、個別ケースの検討に関する会議などを確認する際は、最新資料と自治体・法人の規程を合わせて確認してください。
よくある質問
ケース会議は、どのくらいの頻度で開けばよいですか?
一律の回数ではなく、個別支援計画の確認時期、支援上の変化、家族や関係機関からの新しい情報、安全上の懸念などに合わせて設定します。短い定例確認と、必要なときの個別会議を分け、会議後に決めた確認日を基準に次回を設定します。
本人が会議に参加しない場合、意思はどう扱いますか?
本人の言葉、表情、選択、避ける行動、日々の記録など、確認できた情報を分けて共有します。職員の推測を本人の希望として決めず、必要に応じて本人が選びやすい方法や参加しやすい時間・場所も検討します。
意見が分かれたときは、どうまとめますか?
多数決で見立てを一つにせず、共通して確認できた事実と、まだ確かめられていない仮説を分けます。安全と権利を優先しながら、次回までに試す小さな支援、記録する反応、担当者、確認日を決めます。
まとめ
児発・放デイのケース会議では、今日決めたいこと、本人・家族の希望、観察した事実、試した支援と反応、見立てと仮説、次に優先する一つ、担当・期限・確認日を順番にそろえます。会議で結論を急ぐより、何を試し、どの反応を見て、いつ見直すかを明確にすることが次の支援につながります。
職員同士の小さな言葉の積み重ねで相談が減っていく怖さを物語で読みたい方は、noteの第2話「たった一人の入社から、職場が静かに変わり始めた」もご覧ください。