
児童発達支援や放課後等デイサービスでは、新人職員も活動、送迎、記録、保護者対応など多くの場面に関わります。管理者や児発管が気づいた点を伝えるとき、内容が抽象的だったり、一度に多くなったりすると、本人は何を変えればよいか分からなくなります。
フィードバックは、本人の性格や適性を決めるためのものではありません。確認できた事実を共有し、子どもの支援にどうつながるかをそろえ、次に試す一つの行動を決めるための対話です。ここでは、日々の短い振り返りでも使える6つの伝え方を整理します。
1.評価ではなく事実から始める
「周りが見えていない」「声かけが多い」といった評価だけでは、本人はどの場面を振り返ればよいか分かりません。時間、場面、子どもの様子、職員の行動を分けて伝えます。
「片付けの合図の後、Aさんが棚の前で止まっていたときに、3回続けて声をかけていました」のように、見たことを短くそろえます。
記録や他職員からの情報を使う場合も、推測や評判を事実として扱わず、誰がどの場面で確認したかを整理します。本人の意図は、事実を共有した後に聞きます。
2.子どもへの影響と結びつける
「事業所のやり方だから」だけでは、フィードバックが手順の暗記になりやすくなります。その行動が、子どもの安心、意思表示、活動への参加、安全、チームの情報共有にどう関係するかを説明します。
- 待つ時間が、本人が自分で選ぶ余白になる
- 短い言葉と見通しが、次の行動を理解しやすくする
- 記録に具体的な反応を残すことで、次の担当者が支援を続けられる
目的が共有できると、場面が変わっても本人が考えて応用しやすくなります。
3.優先する一つを決める
活動後の振り返りで、声かけ、位置取り、記録、片付け、保護者対応をすべて直そうとすると、実行する焦点がぼやけます。安全上すぐに変える必要があることを除き、次の勤務で試す一つを決めます。
優先順位は「子どもの安全と権利」「本人の意思や安心」「チームでそろえる必要性」「すぐ試せるか」の順に考えると整理しやすくなります。残りは記録して、次回以降に扱います。
4.本人の見立てを先に聞く
管理者から正解を伝える前に、「あの場面をどう見ましたか」「何を意図して声をかけましたか」と本人の見立てを聞きます。経験が浅くても、子どもの小さな変化に気づいている場合があります。
見立てが管理者と違うときも、すぐに否定せず、どの事実からそう考えたかを確認します。見た情報が違うのか、支援の目的が共有されていないのかが分かると、次に必要な説明や同行が選びやすくなります。
5.次の行動を具体的にする
「もっとよく見る」「子どもに合わせる」で終えず、次の場面で行う動作にします。
- 片付けの合図を一度伝えたら、10秒待って反応を見る
- 動き出さないときは、言葉を増やす前に絵や予定表を示す
- 活動後の記録へ、支援前後の反応を一つずつ残す
本人だけに任せず、必要なら先輩職員が見本を示す、同じ場面を一緒に担当する、使う言葉や教材を準備するといった支援も決めます。
6.試した後の確認日時を決める
伝えた時点を完了にせず、いつ、どの場面で、何を確認するかを決めます。次の活動後に3分だけ振り返る、週末の面談で記録を一件見るなど、勤務の中で実行できる形にします。
結果が変わらなかったときも、本人の努力不足と決めず、目標が難しすぎなかったか、役割や時間が確保されていたか、子どもの状態や環境が違わなかったかを見直します。フィードバックは一度で直すためではなく、試行と確認を続けるために行います。
5分で使える振り返りの型
- 事実:「今日の○○の場面で、△△がありました」
- 本人の見立て:「そのとき、どう見えていましたか」
- 支援の目的:「本人が選べる時間を確保したいです」
- 次の一つ:「次は一度伝えた後、10秒待ってみましょう」
- 再確認:「明日の活動後に3分だけ振り返りましょう」
短い振り返りほど、評価の言葉を減らし、次の行動と確認日時を明確にします。
伝えにくい内容ほど、人前で完結させない
活動中に安全上の修正が必要なときは、その場では短く具体的に伝えます。その後、ほかの職員や利用者の前を避け、理由と次の行動を落ち着いて確認します。人格、経験年数、過去の失敗をまとめて評価せず、今回の事実に範囲を絞ります。
一方で、虐待や権利侵害が疑われる行為、重大な安全上の懸念、事故につながる行為は、通常の育成面談だけで扱わず、事業所の報告手順、責任者、自治体の指示に沿って速やかに対応します。
フィードバックを個人任せにしない
伝え方が管理者や先輩ごとに大きく違うと、新人職員は基準をつかみにくくなります。事業所内で、観察する項目、記録する事実、相談する基準、振り返りの時間をそろえます。子どもを観察するときの6つの視点と、申し送りで共有したい6項目も、共通の言葉をつくるときに役立ちます。
こども家庭庁の各種ガイドライン・手引き等の公開ページには、児童発達支援・放課後等デイサービスのガイドラインや自己評価に関する資料が掲載されています。事業所の研修や振り返りでは、最新資料と自治体・法人の規程も合わせて確認してください。
よくある質問
その場ですぐ伝えるのと、後で面談するのはどちらがよいですか?
安全や権利擁護に関わる内容はその場で対応し、それ以外は活動を妨げない短い声かけと、落ち着いて振り返る時間を分けます。人前で長く指摘せず、本人が事実と次の行動を整理できる場所と時間を選びます。
同じことを何度伝えても変わらないときはどうしますか?
本人の意欲だけを原因にせず、伝えた内容が具体的だったか、実行する時間や役割があったか、見本や練習が必要かを確認します。次回までの一つの行動と確認日時を決め、それでも難しい場合は配置、業務量、研修方法を管理者側でも見直します。
よかった点も必ず伝えた方がよいですか?
機械的に褒める必要はありませんが、本人が続けたい具体的な行動を確認することは役立ちます。『よかった』だけで終えず、どの行動が子どもの安心やチームの連携につながったかを事実に沿って伝えます。
まとめ
新人職員へフィードバックするときは、評価ではなく事実から始め、子どもへの影響、優先する一つ、本人の見立て、次の具体的な行動、再確認の日時をそろえます。経験が浅いことを欠点として扱うのではなく、すでに見えていることと、次に学ぶことを分けると、支援の振り返りが続けやすくなります。
療育未経験でも観察力や待つ力はゼロではない、という場面を物語で読みたい方は、noteの「第1話『この人、本当に未経験?』と思った」もご覧ください。